【子ども】子どもの育ちと精神医学の話
こころの原点を見つめて──めぐりめぐる乳幼児の記憶と精神療法
- 作者: 小倉清,小林隆児
- 出版社/メーカー: 遠見書房
- 発売日: 2015/09/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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小倉清、小林隆児の共著で、2013年に行われた西南学院大での対談も入っている。
精神疾患の多くは思春期に発症し、2〜3歳頃までの乳幼児期に端を発しているという。著者の一人を紹介してくださった、ある大学の先生とこの夏にお話することがあり、子どもの心と体の育ちに2〜3歳頃までの経験がいかに重要であるか、そしてその後の段階の子たちに今何が起きていて、私たちに何ができるのかを考えていた。
自分の息子、2歳なので。より私にとっては切実だったのだけど。
小倉清先生がショックを受けた電車内での体験(ベビーカーに乗った2歳くらいの子が自分の方を指差してニッコリしたので思わず笑い返すと、それを見た子どものお母さんがぐるりとベビーカーの向きを変え、その子が他の乗客の方を見られないようにしてしまったということ)、実は結構見る。そして思い出したのが、以前2ちゃんなどで見た、おんぶに積極的になれない方の声「通りすがりのババアに子どもを触られたくない」「勝手に食べ物とか与えられたらイヤ」などなど。
食べ物は食物アレルギーとかの話もあるからね、分からないじゃないけど。通りすがりの人だからね。一瞬の出会いくらいはそんなに神経質にならなくていいんじゃないのかなぁと思うけど、私は。乳幼児期の母子とそれを取り巻く人、社会の課題とその後の影響を考えると、ちょっと気持ちが暗くなる。ベクトルの違いはあれど、みんなお子を大切にする気持ちは同じだと思うんだけどね。
で、ついでに読んだのがこちら。
最近発達障害界隈でお名前を見かける、神田橋先生。
見出しだけ見ると代替療法テンコ盛りだったりするんで、引いちゃったらごめんなさい。気持ちはわかる。私もそれで長らくこの本に手を出さなかった。けどその前に書いてある「自分が"気持ちいい"と思える感覚が大事」という話を読んで、確かに精神科のお世話になる人たちが失っている、そして治療の成否に関わるとても重要な感覚だと思い、納得して読み進められた。QOLって患者さん自身が決めるもの。抗うつ剤もホメオパシーもあくまでツール。過ぎたるは及ばざるがごとし。どんなものにも大なり小なり副作用はある。それを拾う自分の感覚をいかに取り戻すかが、まさに精神科「養生」のコツ。精神科ならではの考え方なのかも。
長らく神経症や精神疾患で悩んでいる人の気持ち、ちょっと楽にできるおおらかさというか、そういう素敵な楽観がいい。自分も経験がないわけじゃないので、こんな先生が近くにいたらなぁ、と思ったり。
ちなみに小倉先生も神田橋先生も、確か師匠が中井久夫先生だったような。どちらの先生にも共通するのは、患者さんが自分自身を解きほぐしていくその過程を大事にされているところじゃないかと思う。お二人ともご高齢だけど、彼らの直系のお弟子さんはいるのだろうか。かなり少数派の精神科医だと思うので、この系譜が今後どうなるのか気になる。